事業仕分け 科学研究費

さて、去る13日に文科省関連の事業仕分けが行われたのだが、その結果は燦々たる状況である。
文科省管轄の)科学研究関連で事業仕分けの対象となったものが
SciencePortalのレビューに出ている。
研究への資金分配法が変わるのだから、我々研究者も気にかける必要があるだろう。

実際の討論の内容はニコ動で見ることができる。
タグ 事業仕分け


我々若手に関係ありそうな所に関しては

で聞くことができるが、はっきり言って文科省の担当者の説明がグダグダで、こりゃ駄目だという感じ。


自分たちの論理で話をしていて、評価者がどのような事を聞こうとしているかを無視した説明で、説明になってない。あと一番注目すべきは、評価者からポスドク1万人計画がそもそも問題だろと言う指摘がなされていた(23−25分あたり)。あとは、アカデミアで生き残れそうもない学生には早期に引導を渡すべきという指摘(26-30分あたり)なども出ており、それに対する文科省の担当者の現状認識が甘いので反論に説得力が全くない。特にポスドク問題に関する議論はかなりの時間が割かれていた。


まあ早期に引導を渡すべきと言う評価者の指摘は当然の事で、これはむしろアカデミアの人間にとっては耳の痛い話である。現在の分野はそうでも無いがmolecularの分野では「マンパワー」を集めるために、とりあえず大学院進学を勧める傾向が強い。その他にも大学院生一人あたりXX万円が研究室に運営交付金として支払われる。この運営交付金は研究費と異なり、使途が(私的流用でなければ)一切規定されないので、非常に使いやすいお金である。一方海外であれば、取った大学院生へ給料を払わなければならないので、払う価値のない学生はそもそも大学院に入る事ができない。日本と全く反対の状況である。個人的には前職時代には適正の無さそうな人には就職を勧めていたが、所詮パシリの助教が何を言ったところで教授が言わない限りは、学生の考えが変わる事なんてないんだろう。。


あと、教育をしっかりする、と言うのも頭が痛い話だ。日本の大学院の場合は大学院入学後にいきなり所属研究室での研究が始まってしまう。しかしながら、アメリカ、イギリス、ここスイスでは大学ごとで違いはあるが、はじめの1年ほどは講義形式で研究テーマに関する勉強のみならず、その周辺領域を含めてかなり広い分野に関して勉強をするので蛸壺に陥らずにすむが、日本の大学院では大学院入学後そのまま研究室での研究が始まってしまうので、そのような研究分野の周辺領域に関する教育を受ける機会が全くない。そう言う点では個人的な話になるが、自分の大学院時代の恩師である中西重忠先生は新しく入ってきた学生に対して必ず「アメリカの学生は非常に幅広く勉強してきとる。君らはそう言う機会がないんだから、自分たちで意識して勉強せなあかんで。」と言われていた。普段はあまり人の言うことを聞かない自分であったが、その教えは珍しく?真面目に聞きmolecular neuroscienceをやっていながら、cognitive neuroscience, theoretical neuroscienceまで大学院生時代に勉強したもんだ。まあ、そんな経緯もあってか大学院修了後にはcogntive neuroscienceの分野に大幅に分野を変えて現在に至ると言うわけだ。


様々なブログの記事を見ていると科研費・若手支援オワタ\(^o^)/
みたいな記事が書かれているが、ニコ動にupされている実際の議論を聞いていると、現状のツギハギのフレームワークを何とかしろと言うエールにも聞こえる(ポスドク問題とか、テニュトラはそもそも大学が自主的にやるもんじゃ無いの?とか)。自分が特に感じたのは文科省の担当者よりも、評価者の方が現場の状況を把握していると言う点である。


ついでに競争的資金(先端研究)も聞いてみたが、学振とJSTが分かれてる事に対する問題提起もなされていた。あとは政策的なお金ばかりが増えているのが問題(10分ごろ)で、もっと基盤的な研究費(いわゆる科研費)に重点を置くべきであると指摘も出ている。さらに、面白いのは大きな政策的資金が増える事で旧帝大ばかりにお金が集中している(14−15分)と言う問題提起もなされている。特に最近出てきている大型プロジェクトに対する無駄に関しても出ている(18分頃)。他省庁との重複に関する指摘も出てましたね(NEDO, 厚生科研などかな)。


で、事業仕分けが云々という前に、我々アカデミアの側で改善すべき事も多分にあると思う。以下は自分なり思うアカデミアからの改善点。

  • マンパワーとして大学院生を取るのでなく、ちゃんと教育するに値する学生だけを入学させる。(定員の件に関しては文科省と要交渉だろうが)博士課程の定員は現在の半分位に減らすべきであろう。
  • 大学院入学後すぐに研究室で実験を始めるのでは無く、最初の1年間は講義形式で周辺領域まで勉強させる。当然、教員側にもその講義に関する負担は生じるが、それぐらいの気概を持たないと現状の蛸壺研究者養成機関から脱却するのは厳しいであろう。
  • 直接今回の件とは関係ないが、日本の場合、出身学部からそのまま同じ大学・学科の博士課程への進学が非常に多い(かく言う自分もそうなのだが)。海外の場合だとその様な学生はほとんどおらず、学部と異なる分野の大学院へ進学することも非常に多いし、当然大学院進学の時には学部時代とは違った大学へ行くことが多い。ポジションの流動性が色々と叫ばれているが、分野間の流動性が低い事の方が日本のアカデミアにとって致命的なるのではないだろうか?


で、気になっているのは、内定が出ている海外学振は流れてしまうんですかね?
まあ、このタイミングで海外学振が流れてしまったら、日本に帰るしかないんですが。。まあ面接免除での内定なので、海外学振が一部切られても大丈夫だとは思うが、内定が無くなったら研究から足を洗って日本に帰るしかないかなー・・。


その他、参考資料