ポスドク問題

この数年、あちらこちらで話題になっている「ポスドク問題」(博士課程を修了し博士号を取得したものの、常勤職を得られない人たちが急増しているwikipedia:博士研究員も参照)だが、今更何を書くのかと言う気もしていたが、今回の事業仕分けの討論を聞いていて、自分や周りの知人の経験などを踏まえ、他の人とは少し違った視点から書いてみようと思う。大きく分類した後に、「それなりに研究は出来るが、常勤職を得られない人達」にどういう問題があるのか自分が特に感じる所を書いてみようと思う。



ポスドク問題は大きく2つの問題に分けられると思う

  • アカデミアから民間への就職が進まない
  • アカデミアに残ったものの常勤職に就けない

アカデミアから民間への就職だが、自分が見ている限りでは、それなりにできる人の方が周りが見えていて、さっさと就職を決めている気がする(場合によっては修士卒で就職)。でいつまで経っても常勤職につけない人を能力的に見ると、さっさと就職を決めてしまう人よりも劣っている傾向を感じる(当然例外はあるだろうが、自分の周りを見ていると全体としてそういう傾向があるように思われる)。まずはこの層に就活をさせる事が先決であろう。



で、アカデミアに残ったものの、ポスドクから常勤職に就けない人を大きく分けてみると

  1. そもそも研究能力に問題がある
  2. それなりに研究は出来るが、常勤職を得られない
  3. 上の方の政治的な駆け引きに巻き込まれてしまってポジションが無い


1は言うまでも無く常勤職を得られない人たちである。
非常に厳しい言い方だが、この人たちは本来博士課程にくるべき人では無い。学部卒か修士卒でさっさと就職すべきだった人達だろう。また、本来ならば指導教官が就職を促すべきだった人達である。この層を良いように使って来た教授層にも大いに反省してもらいたいもんである。この人達へのexitに関しては、団塊の世代の小中高の教員の退職にあわせて、教員免許を取らせて就活支援以外にアイディアは無い。


2に属する人たちが意外と問題で、それなりに仕事はできる人たちなのだが、いつまで経っても常勤職を得られる事ができない人がいる。この層への自分自身が感じる事を、下の方にまとめて書いてみようと思う。


3のパターンは確かに身近にもいた。しがらみによって講座そのものが無くなり助教のポジションを追われた為に、現在海外でポスドクをやっておられる人もいる。この方は非常に能力も高い方だが、こういう不運な例もある。こういう事もあるので、天災から身を守る為にも、ある程度のコネクションは必要なのであろう。



なぜ、それなりに研究は出来るが、常勤職を得られないのか?
で、先ほどの「それなりに研究は出来るが、常勤職を得られない」層に関してであるが、その人達を見ていると「研究が楽しければそれで良い」と思っているように自分は感じることがある。
これの何が問題かと言うと、大きく分けて以下の2点が問題であろう。

前者であるが、ポスドクから常勤職として雇用されていると言うことは、給料も当然上がる訳で、上がった給料の分を求められるのは当然である。と言うことは、単にデータを出すと言うこと(兵隊として働く)に加えて付加価値を当然求められる訳だ。具体的には、学生の面倒をみることができる、講義をする、備品購入の際に機器の評価をする、研究費を取ってくるとかである。で、こういう事を書くと自分も学生の面倒を見ていると言う人もいるが、「その講座の助教が突然抜けた時にそのまま代わりができますか?」と言う質問を投げかけてみたい。それが出来る人ならば、色々な所に顔を売っておけば、まあポジションは得られるであろう。
 と思う自分は傲慢なのかな?
でも自分の周りの同世代の連中でこれが出来る人はもれなく助教なり講師なりのポジションに就いていると言う事だけは記しておきたい。


後者に関する事だが、自分がそこで常勤職を得た後にどのような事をしたいか?と言うヴィジョンなりキャリアパスを示す事が出来るか?要するに採用する側としても、万年助手になってもらっては困る訳なので、留学予定のある人ならばともかく、留学後や留学の予定を無い人を採用するのならば、当然ながらその人がどのようなキャリアパスを考えているかは当然考慮されるであろう(と言うか、知り合いの先生と話していたらこういう話が出た事がある)。また、常勤職を得るという事はPIへの道を進む訳だから、ラボの主宰者である以上は自分の研究に対するヴィジョンを語る事が出来なければならない。そして、キャリアを積んでポジションを取るためには、色々な所に顔を売るという事は当然必要な訳だから、そういうコネクションが強い所に身を置くという事も当然含まれる。間違ってもポスドクで地方になんか行ってはいけない(海外行く前のワンクッションなら有りうるかも知れないが)。最低でも旧帝大か国研に残っておくべきである。海外にいて、日本に戻って来たいなら、データが出始めたらメインの学会には参加して発表すべきであろう。こちらに来て長い訳では無いが、こちらでずっとポスドクをしていて日本に帰る気配の無い人は、日本の学会に全く参加してない傾向がある気がする。