アウトリーチ


ふじーさんの所で今回の提言のアウトリーチに関してエントリが立っていた。
詳細は該当エントリを読んで頂くとして、ネットを使ったアウトリーチに関して疑問を呈するコメント


で、それに対するVikingさんの所のエントリー
こちらでは既存のメディアの問題点を指摘しつつ、ネットメディアの特性として研究者とお茶の間のフィルタが無いことを挙げておられた。


再度ふじーさんからのエントリ
では、もっとも効果のある方法を選ぶべきで、それが既存メディアであり、その中でも出版はフィルタリングが小さい。また「似非脳科学本」は著者の問題と言う反論。


とまあ、こんな感じのやりとりがあった訳ですが。。
Vikingさん、ふじーさん、要約がまずいようならばご連絡下さい。全文載せます)



以下自分の意見


既存メディアとネットメディアに関してmutual exclusiveな議論をしても仕方がないと言うのが自分の意見。確かに既存メディアの効果は大きいのでしょうが、リーチできる範囲は元々関心のある人たちで、リーチ先の意外性は低いのではないでしょうか。


ここで、Wikipedia:en:social networkの観点から既存メディアとネットメディアによるリーチを考えてみようと思います。Social networkでは一人の人を一つのnodeと考えて関係性のある人同士をtieで結んだ形表します。身近な例では、感染症の拡散の解析などに使われたりしています。感染症では単純拡散として広がっていくのではなく、空間的に非常に偏った形である場所に集中していたり、また離れた場所に突然広がっていったりします。感染の広がりではsuper spreaderと呼ばれる人を中心として爆発的に広がって行きます。これはsocial netではハブと呼ばれるtieが非常に多いnodeに(この場合、感染が)到達したときに、一気に広がって行くわけです。


と、前提はこんなもんにして、ここからが本題で、既存メディアの場合の一次的に影響を与えるノードの数は非常に多いでしょう。しかしながら、そこからの波及性を考えるとネットワーク全体への影響を見たときには、必ずしも大きく無い事も多々あります。一方、ネットメディアの場合はたとえ一次的なノード数は少なくてもハブへ到達すれば、そこから一気に広がります。閲覧に関する(金銭的だけでなく作業的な)コストが小さい為、拡散の程度はよほど大きいでしょう。また、tieのつながり方によっては、空間的にかなり離れた所に情報が到達するので、既存メディアでは届かなかった所へ情報が届くのも特徴でしょう。


個人的な経験ですが、昨年swiss infoと言うスイスのニュースサイトで神経経済学についてインタビューを受けて話す機会がありました。こう言うのもなんですが、サイト読んでる人なんて数が限られているだろうなと思いつつも良い経験だと思ってインタビューを受けた訳です。今年になってチューリッヒ日本人会の餅つきに行ったときに、参加者の方と話をしていたら、ジュネーブにあるJETROのスイス支局の所長さんが来られていて、podcast聞きましたよなんて言われました。接点が全くなさそうな所へ情報が伝わるネットメディアの力を改めて感じました。


で、関心を持ってもらえたら書籍などで、さらに詳しく知ってもらえれば良いじゃないですか。アウトリーチって言ったって、目立つ所で本を書くとか、講演をするばかりがアウトリーチじゃないでしょう。一人が頑張ったって限界があります。皆が同じように頑張ったってこれも限界があります(進化論的にも同じ事をしていては種は絶滅します)。本を書くのが得意な人、ブログを書くのが得意な人、講演的なtalkが得意な人、双方向的なtalkな得意な人、それぞれが、自分なりにeffortを割くのが良いじゃないでしょうか。そりゃ本を書いて売れれば、印税ウマーでしょうが、居酒屋の常連の飲んだくれたオヤジ相手に脳の話をするのもアウトリーチの一つでしょうし、近所の子供や子供の同級生相手に子供向けに話をするのもアウトリーチでしょう。


いずれにせよ、文句を言うだけで、何も行動を起こさないでよりは、効率とか勝算とかを考えずに、まずは動く事から始ましょう。で良いではないですか。。